高尾穂見神社の夜祭

穂見神社大鳥居

 以前、南アルプス市若宮神社を訪れた際、高尾穂見神社の夜祭のことも聞き、気になったので行ってきた*1
 神社には「駐車場がある」とのことなので車で行く。南アルプス市小笠原から西へ林道を登っていく。時間は午後6時30分。途中、提灯で足元を照らしながら歩く人々を追い越す。服装はウォーキングかトレッキングというところで、大人から子どもまでかなりの数だ。どうも昔からの高尾講が今では地元の子どもたちが行うウォーキングラリーのような行事になっているらしく、麓から神社まで列を成して歩いていく。
 山間の少し窪んだような土地にある集落の奥に神社がある。境内近くの駐車場に車を停めて参道を歩いて行くが、寒い。以前の夜祭は新嘗祭として11月30日に行っていたそうで、さらに寒さが厳しかったとのこと。冬の東部前線にいる様な気分で「猛烈な寒さです」「まだ、暖かい方だぞ」と脳内会話を交わしながら石段を上がると、境内は参詣者でいっぱいだ。境内を入って右手にある舞台では、地元の女の子が巫女の舞を舞っている。左手には重厚な神楽殿が。これがが明治に再建した市指定文化財です。で、本殿は17世紀の建造で県指定文化財
 そして太太神楽。回り込んで回廊に上がり、神楽殿の傍まで近づかさせていただく。途中、衣装倉になっている土蔵から狐面が顔を覗かせた。
 奇習、資本金!まあ、奇習というほどのものではないのですが。ここで二千円を奉納して、おふだと新しい千円札をもらう。その千円札を資本に商売をすれば繁盛疑いなし、というもの。昔は先に神社から資本金を借り、商売に成功した後で翌年、お金を奉納するという形だったそうですが、そこはそれ世知辛い世の中ですから現在は先に奉納する形になっています。ちなみに、写真に法被を着た地元消防団が写っているが、カタカナの染め抜きが面白い。
 ネット上ではこの神楽殿について、山間にこんな神楽殿があることに不思議を覚える旨の感想が散見する。地元の人を捉まえて聞けば、かって高尾には、門前集落に近いような散村集落の形態で人々が住み、神社には静岡や長野からの参詣者が列を成したそうで、重厚な神楽殿はその名残ということになる。この土地(山梨県の旧櫛形町)に多い穂坂姓は、この高尾の集落が発祥だそうで。時代とともに集落の人々は山をくだり、今では三戸ほどが残るのみとのこと。それでも春の例祭、秋の例祭などのときばかりは、軒に提灯を吊るし、親戚などが帰郷する由。なるほど、闇の中に無住の家屋がいくつかあるようだ。産業や社会の変化とともに豊かさもまた土地から土地へと移動していくということか。それを思うとこの夜祭も今は盛況だが、やがては消え行く祭りなのだろうか。

*1:実際には11月22日の出来事となる。