銀河のさすらいびと

  伯父の死で経済的支援を絶たれた「ぼく」は、カレッジを中退する。粗末な葬式で伯父を弔った後、働き始めるが不運は続き、定職も得られぬまま浮浪者に。
 町を出、荒野をさまよい、寒気とみぞれをさけるために、偶然見つけたサイロに潜り込むが・・・。
 そして、「ぼく」は運命の変転から、ひとりの女性を追い求めて銀河を遍歴することになってしまう!オデュッセイアのように。 
 Keith Laumer,Galactic Odyssey(1967)
 1974年にハヤカワから出版されたものの新装版。2005年8月31日初刷。カバーイラストは、エナミカツミ

銀河のさすらいびと (ハヤカワ名作セレクション ハヤカワ文庫SF)

銀河のさすらいびと (ハヤカワ名作セレクション ハヤカワ文庫SF)

 一仕事片付いたので、肩のこらないお話でも読もうかと、閉店間際のスーパー(書店併設)で購入。新装の萌えイラストに引かれて買ったんじゃないやい。
 一気に読めた。
 猫とSFは相性がいい。猫は脇役ですが、本作は猫SFでもあります。
 主人公ビリイがさらわれた姫様を追って、ひたすら過酷な冒険行をするというシンプルなストーリイですので、お読みになるときは思考を少年(もしくは少女)モードに切り替えて(ロシア語で考えるんだ)。
 冒頭、まるで『火垂るの墓』の兄のように甲斐性のないビリイが、後半、仲間から「おどろいた生き物だな、あんたは。牙獣に追いつめられても、きっとこういうだろうよ−短剣として使うには、お前の牙は小さすぎると!」と評されるまでのタフな男になるという成長譚がメイン・プロットになっています。
 そのため、優勝旗返還〜授与のごとく、ヒロインがお話の序盤と終盤にしか活躍しません(中盤にも一瞬だけ登場しますが)。ヒロインの存在が、冒険を達成したビリイへ与えられる月桂冠にすぎないのが残念です。
 収穫イカダでの奴隷労働のくだり等、実にスペースオペラを読んでいる気にさせてくれる。