火星ノンストップ (ヴィンテージSFセレクション―胸躍る冒険篇)

山本“心はいつも15歳”弘の編集による古典SFアンソロジー
カバーイラストは増田幹生。
 古い酒をチビリチビリと飲むように一篇づつ読んだ。未来幻視文学としてのSFの醍醐味を味わえる作品集。ISBN:4152086513
表題作のジャック・ウィリアムスン「火星ノンストップ」
 シンプルだが、おもしろい。
 当時(1930年代)は「最新のテクノロジーであるレシプロ機が、時代遅れになってしまった未来世界の物語」というコンセプトで執筆された、つまり読者のすべてがカーター側の立場で本作を読むわけですが、執筆から半世紀以上経過した現代では、ほとんどの読者がエレン側の立場にいるわけです。この辺の視点の変化そのものがSFだなと。
 編者は現代SFと古典SFの関係性になぞらえて、最初からカーターに感情移入して読んでるようですが。
ラインスター「時の脇道」
 アイデア自体が古びたり、人口に膾炙すると印象に残らないタイプの作家か。 
ムーア「シャンブロウ」
 野田昌宏、執念の翻訳。シャンブロウ萌え。
ヴォクト「野獣の地下牢」
 さすがヴォクト、鮮烈で巨大なアイデアを無茶苦茶な設定で突っ走らせるように読ませます。
アラン・E・ナース「焦熱面横断」
 星野之宣の「灼ける男」を思い出した。逆だ、逆。
コリン・キャップ「ラムダ1」
 うーん。
 営業的には「と学会会長編集」が売りなのだろうが、主役はあくまで収録作品群なのであって、各作品解説に加えて、まえがき・あとがきまでもとは、少し(編者が)前に出すぎでないかい、とは思う。
 難を言えば、もう少し翻訳に関する書誌情報が必要では。