異端審問

simobasira2005-09-18

渡辺昌美『異端審問』ISBN:4061493124
この本は、阿鼻叫喚・怨念渦巻く中世ヨーロッパ異端審問の世界へようこそ、というような内容ではなく、割と淡々と12〜14世紀辺りの異端者と異端審問の推移について南フランスを中心に記述されています。
変態かつ北斗の拳の悪役のような初期の審問官から、ベルナール・ギーに代表されるような冷徹で論理的な異端審問官まで、審問官の気質も時代とともに変遷したそうですが、ベルナール・ギーというと虎眼流並に残酷無残の審問官というイメージがありますが以外や審問官としては良識的な部類だとか。有能で精力的、意志が強くて記録魔、火刑にしたのは確認できる限りでは42人。また、ドン・キホーテのような人間の一類型として異端審問官を提出できるというのはおもしろいです。
で、ジャン・ジャック・アノー監督『薔薇の名前*1についても触れられているんですが、無事、審問官を退いた後70歳代で亡くなる史実のギーと違って、映画ではギーは死ぬんですが、それについて

スクリーンにあれだけ嗜虐的な人間像を見せた以上、応報がなければ観客の気持ちが落ち着かないだろう。*2

と、著者がエンタテイメントに理解を見せてるのが妙に可笑しかった。学者先生なのに。

  • この本に載ってたギーのかっこいい言葉

 「苦痛は心を開かせる」

  • この本に載ってた会議で使ってみたい言葉

 「一本の釘を抜くには、もう一本の釘を打ち込む以外に無い」

 ジャコバン派の由来になったジャコバン修道院ジャコバンは、ドミニコ会士のこと。
        ↓
 ドミニコ会のパリでの拠点が聖(サン)ジャック僧院(クーヴァン)だった。
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 ジャック・クーヴァンだからジャコバン(本当)

*1:見たはずなのに女優さんがエロかったことしか印象に無い

*2:渡辺昌美『異端審問』講談社、1996年 145頁