ストリートファイター
雨音で目が覚める。一日のはじまり方としては悪くない。
竜崎遼児「ストリートファイター」集英社,1985年
ISBN4-420-13137-3 ジャンプ スーパー・コミックス 8月15日初版発行 定価360円
ISBNも手入力だ。
70年代、80年代と少年誌でスポーツ・格闘技漫画を描き綴った竜崎遼児が、長期連載の谷間の時期に発表した3編の連作を収録したのが本書です。カバー折り返しに掲載されているコメントによると
「(前略)沖縄・横浜・東北から北海道と、かなりぜいたくな取材をさせてもらった。好きなボクシングを題材に、苦手な女性があまりからんでこないストーリーにした。おまけに締め切りは、融通をきかせてもらった。(後略)」
と述べています。60ページ程の読み切りを描くのに、北海道や沖縄に現地取材!締め切りには融通!と贅沢な執筆環境だったようですが、著者自身が
「好き勝手に描いた作品*1」
と言うだけあって、実に丁寧に、且つのびのびとした筆致で全編が描かれています。
お話は、沖縄出身の空手家であり、殴られ屋であり、米軍キャンプで行われる賭けファイトで海燕ジョーと異名をとる青年、伊波譲児を主人公とした連作です。収録作は、「PERT1 沖縄人・・・の巻」、「PERT2 帰れリングへ!の巻」、「PERT3 ジョーの伝説の巻」の3編です。単行本には初出誌が記載されてないんですが、どなたかご存知ないですか。
- PERT1 沖縄人
3篇中もっともプロットがまとまっている。「沖縄」「在日米軍」「空手」「ボクシング」の4要素が過不足なく絡み合い、鮮烈な印象のラストシーンへとつながっています。
で、お話の最後に伊波は拳を壊します。
- PERT2 帰れリングへ!
現地取材が東北・北海道の描写に生きているという感じ。ストーリーとしては、平凡な人情話です。
で、お話の最後に伊波は、また拳を壊します。
- PERT3 ジョーの伝説
賭けファイターとしての伊波に焦点をあてたエピソード。故郷、沖縄で邂逅した無痛症の男と賭け試合に挑む。
で、お話の最後に伊波は、またまた拳を壊します。
3編1巻で完結する短いストーリーですが、竜崎遼児の熱く躍動感ある描線が楽しめます。
*1:カバー折り返し掲載のコメントより