夜叉神峠

峠

時間ができたので、山梨県の夜叉神峠に紅葉を見に行った。夜叉神峠というと小池一夫の『夜叉神峠』ISBN:4883159442。いえ、思い出すだけですが。林道閉鎖の直前の時期だ。通行規制区間のゲートの手前にある、北岳への登山道入口駐車場に車を止める。午前11時頃から歩く。すれ違う登山者と挨拶を交わしながら、登山道を登って行く。往古であれば、峠から北岳の麓を掠めて静岡県側に至る難路だが、徒歩一時間程の峠に行くだけなので気楽だ。峠まで登る軽装の中高年も多かった。
正午過ぎに峠の頂上に着く。うーん、夜叉神売店の人の対人対応が殺人的だ。私は山登りというものをしないので良く分からないのだが、山男というのはああしたものなのだろうか。峠からは農鳥、間ノ岳北岳が一望にできる。遠望していると一跨ぎで三山を縦走できそうな錯覚に陥るのは、素人の浅はかさ。肌寒さを感じながら、登山シーズンの終わりを感じた。

読んだ本

simobasira2005-10-23

松田シロ「自転車家族」ISBN:4088653076*1
あー、久しぶりに表紙買いで当りの漫画だ。「敬服しました。『このこ どこのこ』のようなものを是から二三十並べて御覧なさい。『YOUNG YOU』で類のない作家になれます。」というような感じでしょうか。って、『YOUNG YOU』は休刊だろ*2
書誌情報と収録作感想文後で追加。
あと、こんなのがあったのでメモ。
「山岳ポスターが完成 市内在住の漫画家 松田さん手掛ける」(ttp://www.sanyo.oni.co.jp/kikaku/nsf/oknews/の2005年8月27日掲載文の記事参照) 
山岳競技ポスター完成!!

*1:松田シロ「自転車家族」集英社,2005年

*2:2005年10月現在

若宮八幡神社の神楽

simobasira2005-10-01

思い立ち、車で南へ2時間ほどの南アルプス市(!)古市場(ふるいちば)の若宮八幡神社へ神楽を見に行ってきた。果樹、刈入れ途中の水田、住宅がモザイク状に入り混じった風景の中、今では舗装道路となっている参道を歩いてゆく。それほど広くない境内地の隣地は小学校になっている。すでに境内は拝殿のすぐ前まで出店で埋まっていた。
到着したのは午後4時を少し過ぎた頃だが、笛と太鼓の音が聞こえてくる。神楽は、すでに始まっているようだ。神楽殿では女の子たちが浦安の舞を舞っていた。神楽の合間々々に地元の女子中学生が舞うのだそうだ。*1屋台で求めた焼きそばなど食べつつ、まったりと舞を観る。
というわけで、神楽。あまりにまったり見物していたので、何もメモを取っていない。何か宗教的熱狂という言葉が頭に浮かぶ画像だが。一差し舞ったあとに舞い手が、三方に乗せた御札を観衆に向かって撒いていた。地域では、ちょっとした縁起物のようだ。子どもたちは熱心に掴み取ろうとしていた。神楽は夜を徹して奉納される。境内には、いつまでも笛の音が響いていた*2

*1:画像は、肖像権と個人情報の関係で不自然なトリミングとなっております。

*2:と、きれいに結びたいところだが、実際には程ほどのところで神楽を止めるみたい。

『虚栄の掟』

simobasira2005-09-28

佐藤大輔『虚栄の掟』*1ISBN:4877289208。古本屋で100円で捨て売りされてたのを買う。
弱小コンピューターゲームソフト会社「クロスアート」を舞台に、狼にもウサギにもなれない男たちが、妙にもってまわった会話をしながら抜駆け、独立、裏切りをめぐってお互いの腹を探り合う*2、というお話。
奇妙な。すごく奇妙な小説。歪み、捩じれながら、支える対象もないのに突き立っている鉄骨みたいな小説、とか自分で言ってて訳が分からない感想だ。
えー、この小説への感想として「こんなんでゲーム作れるわけねえだろ」というのがありまして。*3社員たち、ゲーム内設定をひねくってるだけじゃないか。佐藤大輔自身はアド・テクノス、翔企画などの会社でボードゲームをデザインしていたようですが。巻末に参考・引用文献とともに

*なお、実名等を伏す条件で、複数のゲーム関係者の協力を受けた。感謝したい。*4

とはあるんだけど、どうも著者のボードゲームデザイナー時代の経験を軸にあまり深く取材せず執筆されているんじゃないだろうか。でもネット上の感想では「実録!業界暴露物」みたいな読まれ方をされてるんですよね。うーん。

*1:佐藤大輔『虚栄の掟 ゲーム・デザイナー』幻冬舎,1997年

*2:最初から最後までこの展開が続く。

*3:例えばhttp://media.excite.co.jp/book/news/topics/061/p01.htmlとか。

*4:佐藤 前掲書 208頁

できごと

simobasira2005-09-25

・世の中には残酷さや理不尽さがあった方が良いときもある。特に若者には。
・ラテン系の女性数人から聞き取り調査。何だこの状況は。
マジソンズ博覧会より。
 クラウス・グラボウスキー。常習的性犯罪者で釈放と引き換えに睾丸除去手術を受けるが、その後7歳の少女を殺害した男。「マリアンネ・バハマイヤー」の項を参照。

 ヴェロニカ・コンプトン。プリズン・グルーピー
気になったのでメモ。

異端審問

simobasira2005-09-18

渡辺昌美『異端審問』ISBN:4061493124
この本は、阿鼻叫喚・怨念渦巻く中世ヨーロッパ異端審問の世界へようこそ、というような内容ではなく、割と淡々と12〜14世紀辺りの異端者と異端審問の推移について南フランスを中心に記述されています。
変態かつ北斗の拳の悪役のような初期の審問官から、ベルナール・ギーに代表されるような冷徹で論理的な異端審問官まで、審問官の気質も時代とともに変遷したそうですが、ベルナール・ギーというと虎眼流並に残酷無残の審問官というイメージがありますが以外や審問官としては良識的な部類だとか。有能で精力的、意志が強くて記録魔、火刑にしたのは確認できる限りでは42人。また、ドン・キホーテのような人間の一類型として異端審問官を提出できるというのはおもしろいです。
で、ジャン・ジャック・アノー監督『薔薇の名前*1についても触れられているんですが、無事、審問官を退いた後70歳代で亡くなる史実のギーと違って、映画ではギーは死ぬんですが、それについて

スクリーンにあれだけ嗜虐的な人間像を見せた以上、応報がなければ観客の気持ちが落ち着かないだろう。*2

と、著者がエンタテイメントに理解を見せてるのが妙に可笑しかった。学者先生なのに。

  • この本に載ってたギーのかっこいい言葉

 「苦痛は心を開かせる」

  • この本に載ってた会議で使ってみたい言葉

 「一本の釘を抜くには、もう一本の釘を打ち込む以外に無い」

 ジャコバン派の由来になったジャコバン修道院ジャコバンは、ドミニコ会士のこと。
        ↓
 ドミニコ会のパリでの拠点が聖(サン)ジャック僧院(クーヴァン)だった。
        ↓
 ジャック・クーヴァンだからジャコバン(本当)

*1:見たはずなのに女優さんがエロかったことしか印象に無い

*2:渡辺昌美『異端審問』講談社、1996年 145頁

ランド・オブ・ザ・デッド

 終業後の疲れた体をゾンビのごとく引きずってレイトショーに行く。
 メモ程度に。
 ザック・スナイダー版「ドーン・オブ・ザ・デッド」を見て、何かが違う、何かが足りない、そう思ったあなた、回答はここにある。
 生者の時代の終りの物語のはじまり、はじまり。
 アーシアとレグイザモのゾンビ偏差値が異常に高い件について。アーシアは分かる、ダリオ・アルジェントの愛娘にして、3歳からロメロと交流があったという、いわばゾンビ・エリート*1。擦れた色気もすばらしい。
 意外や、レグイザモがロメロの世界観になじんでる。ヤンチャな暴れぶりです。
 ライリー(影がうすいよ)は、意外とゾンビものでは珍しい人物造形か。リーダーシップがありつつ、自己中心的でない。責任感がありつつ、街を捨ててカナダへ脱出しようとする。活動的でありつつも、ヒステリックにならずに淡々と行動する。変なキャラ。
 さすがロメロ、ゾンビ家元。ゾンビの佇まいにも、幽玄さすら感じさせます。侘び寂びの世界か。
 本当のクライマックスは、ホッパーのもとへ向かうレグイザモの背中だ。
 「志村後ろ、後ろー」率が以前にも増して高くないか。
 上部ハッチから乗り込め!
     ↓
 レコニング号のフロントを登ったり、滑り落ちたり
 の流れは、アーシアの反応も含めてドリフのコントか。
 ゾンビ側パートは、ギャグと感動が紙一重になった演出。ゾンビ版「奇跡の人」か。ビッグ・ダディ、おそろしい子。
 トム・サビーニの出演シーンは、こなれてない。スナイダー版の出演の方が印象的だった。
 ゾンビの速度は問題ではないのだ。オリジナル「ドーン〜」でもゾンビの速度は演出次第で融通無碍だし、オリジナルのこどもゾンビのすばやい動きは。
 「80年代に撮影はしたもののお蔵入りになっていたフィルムを引っ張り出してきた」感はいなめない。だが、それがいい。映画を見終わった幸福感を感じた。

*1:ペキンパーの「キラーエリート」の次ぐらいにイヤなエリート